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更新日 2019年10月1日

米 村 研 究 室


光学顕微鏡の技術と画像のページ

蛍光抗体法とは


 組織、細胞内の抗原を特異的に認識する抗体を用いてその抗原の分布を調べるという方法があります。そのような組織、細胞の抗原を認識する抗体を1次抗体と呼びます。それに対し、その1次抗体を認識する抗体は2次抗体と呼ばれ、2次抗体に蛍光色素を結合させたものを用い、1次抗体、2次抗体を順次使用することにより、組織、細胞中の1次抗体の分布、すなわちそれが認識する抗原の分布を蛍光標識した二次抗体の分布として見るという方法が一般的な蛍光抗体法です。目的とするタンパク質の局在の情報は細胞分画などによって(例えば核に存在するのか、他のオルガネラに存在するのか等)知ることができる場合もありますし、目的のタンパク質がin vitroで結合するタンパク質がわかっていて特別な局在をしていることが示唆される場合もありますが、細胞内のタンパク質の局在の情報は蛍光抗体法などによって信頼性の高いものを得ることができます。

蛍光抗体法の利点は


 
2次抗体に酵素を結合させ、酵素反応を局所的に起こさせてその強度から抗原の量を判定する、酵素抗体法という方法もあります。蛍光の場合、酵素のように条件によって反応産物の量が変わるというようなことも基本的にありませんから、抗原の量と蛍光量との相関は比較的良いと考えられます。また、励起と蛍光のスペクトラムの異なる蛍光色素(異なった色で光る蛍光色素)を結合した2次抗体が通常用意されているので、複数の1次抗体を用いて、同一のサンプルの複数の抗原の局在の違いを検討することができるわけです。また、蛍光色素、光学系、CCDカメラの進歩等から、1蛍光分子の検出も可能になり、非常に大きなダイナミックレンジで蛍光量を捉えることができるようになってきました。ネガフィルムと比較すると、CCDカメラからの情報は試料のそれぞれの点での蛍光の強度の定量的データとなっておりますので、抗原の量の比較はより正確にできるようになってきております。また、蛍光染色の場合、通常の明視野照明による位相差像、ノマルスキー微分干渉像などには全く影響を与えないので、細胞構造等の情報はそのまま正確なものが得られます。また、蛍光抗体法の普及による光学顕微鏡とその周辺機器の技術的進歩は現在非常に重要な分野であるライブイメージングを支える基礎となっています。


主な原理と手順

 

抗体を用いてありとあらゆる抗原の位置を決定しようとするなら、細胞は固定されていなければなりません。抗体はすみやかに細胞内に入り、抗原に結合しなかったものは洗浄できなければなりません。これは細胞が生きている状態では不可能です。膜タンパク質の細胞外領域を認識する抗体等は細胞が生きている状態でも細胞表面の膜タンパク質に結合できますが、抗体による架橋が影響して細胞が反応し、その分布は正常のものとは異なってしまう可能性があります。さて、固定というのは、細胞内の分子がその後流出したり、構造変化や酵素反応等を起こさないように、その場にとどめ、不活化するものです。注目する抗原は大抵タンパク質ですので、タンパク質を変成させる(3次構造を変化させ、水にも溶けていられないようにし、活性もなくす)ことが必要です。固定については別に述べますので、ここではこのくらいにして、とにかく、細胞内でタンパク質が変成して、動かなくなったとします。抗体を細胞内に流入させるには、細胞膜が邪魔です。あるいは、オルガネラの膜も邪魔と言えます。そこで、膜に穴をあけます。このためには洗剤、界面活性剤の類を用います。一般的にはTriton X-100を用います。この処理により抗体が自由に細胞を出入りできるようになります。試料を1次抗体に浸し、十分に抗原と結合するのに必要な時間が経過したら、余分な未結合の抗体を何度か洗浄します。続いて2次抗体も同じように結合させます。洗浄後、サンプルとしては出来上がりですが、通常は蛍光顕微鏡下での蛍光の退色防止のために退色防止剤の入った封入剤を用いてスライドガラスとカバーガラスとの間に封入し、その間をマニキュアなどでシールします。蛍光抗体法ですと顕微鏡の限界の性能まで使うことも多く、その場合、レンズは油浸の高開口数(NA)のものを用いるのが一般的です。顕微鏡の対物レンズはカバーガラスの直下に試料が存在していることを前提にして設計してあるので、カバーグラスの数十ミクロン下に試料があるような場合は、ぼけたような像になってしまいます。ですから、60倍、100倍のレンズの性能を精一杯使おうとするなら、例えば培養細胞や組織切片はカバーグラスに付着させ、それを裏返しにしてスライドグラス上に封入するのが正しい封入の方法となります。


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