チームリーダー

脳の機能と構築を解明
※2018年4月の組織改編により、当研究室は生命機能科学研究センターの所属になりました。最新の情報は下記よりご覧ください。
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MRIを用い脳の構造、連絡性、共振活動を観察し、機能障害や機能回復を説明する神経回路の変化を同定、その機構を解明することで脳疾患の診断・治療に役立てます。
機能的MRI画像法による異常神経回路の同定。喫煙者がタバコを吸いたいという欲求には、喫煙する状況(喫煙可能な場所か禁煙の場所か・・など)を認知する背外側前頭前野、欲求や喫煙の価値付けをする眼窩前頭皮質との間の異常機能回路が関与することを見出しました。また経頭蓋磁気刺激法という一時的に脳機能を修飾する方法も用いることで、この異常機能回路を断ち切りタバコを吸いたい欲求が抑えられることを示しました。本論文は米国科学アカデミー紀要(PNAS)に掲載され、同誌ハイライトに選ばれました。(下図)
脳卒中患者が発症後3カ月間のリハビリテーションを行う過程で、麻痺側の運動機能と脳内の拡散テンソル画像を時間を追って撮像しました。その結果、障害側の大脳皮質から脊髄へとつながる神経線維連絡路(錐体路)で神経線維の変性が徐々に進む一方、脳の中心付近深部にある赤核(せきかく)で神経突起の再構築が進み運動機能は3カ月間かけて徐々に回復しました。赤核における神経突起再構築は麻痺回復度とも相関しました。赤核は進化的に古い構造物で、ヒトでの機能は十分理解されていませんでしたが、脳障害後の運動機能改善・可塑性に関与することが示されました。今後拡散テンソル画像法を用いることで脳卒中後の麻痺回復に対する新しい治療法の評価・開発や、リハビリテーション法の最適化につながることが期待されます。(下図)
覚醒下で行うマーモセットPET実験システムは世界で初めて当ユニットの横山らにより開発されました。マーモセットは、繁殖効率が高く実験用動物として遺伝子改変が可能です。ヒトと類似した社会性をもち、社会行動研究の対象として使用されます。脳の画像撮像は通常麻酔下にて行われますが、高度な脳機能のリアルタイムの可視化には覚醒下での撮像が必要です。こうした脳画像撮像システムを構築することで社会性を含めた脳機能の可視化が可能になると期待されます。下図は社会性との関与が知られる神経伝達物質セロトニンの脳内分布について、マーモセットとマカクサルの画像と比較したもので辺縁や新皮質ではマーモセットではやや高い傾向を示していました。
実際にマーモセットの新皮質内のセロトニン機能が社会性に関わる特性にどのように関与するか調べた成果を下図に示します。まず、マーモセットが他のマーモセットと対面したときに示す行動(社会性行動)を詳細に観察・解析したところ、そのパターンが攻撃性・不安・有効性の3種類に分類できることを明らかにしました。次に、これらの個性と覚醒下のPETで測定した脳内のセロトニン神経機能との関連性を解析したところ、3種類の社会性行動特性が大脳皮質内側面の異なる部位に表象されることを示しました。大脳皮質内側面はヒトでも他人との関係性認知や感情評価・制御に関わることが知られ、本動物モデルは社会性の形成・破綻機構や自閉症の病態の詳細や因果性を明らかにするのに有用と考えています。
上図)セロトニントランスポーター結合活性が社会行動特性と関連する部位
下図)[11C]DASBを用いたコモンマーモセットおよびアカゲザルのセロトニントランスポータ- PETイメージング Yokoyama et al. Synapse (2010)
CLSTは、2018年4月1日からの理化学研究所第4期中期計画により、3つのセンターに改組されました。機能構築イメージングチームの最新の情報は、下記よりご覧いただけます。
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