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無細胞系によるタンパク質合成システム
 
細胞内で様々な働きを担っているタンパク質は、遺伝子であるDNAの塩基配列を写し取ったmRNAを鋳型として合成されます。このmRNAの塩基配列に従って、アミノ酸を連結していくシステム全体を大腸菌から抽出して、アミノ酸やNTP、必要な酵素を加えて再構築したのが、無細胞タンパク質合成システムです。必須な構成要素は、RNAポリメラーゼ、tRNA、アミノアシルtRNA合成酵素、翻訳因子、リボソーム、そしてDNA(プラスミドDNAあるいはPCR産物)です。
構造・合成生物学部門のシステムは、プラスミドDNA、PCR産物のいずれにも対応できます。原料となる大腸菌はBL21株をベースにしており、菌体抽出液のタンパク質合成活性は、反応液1mL当り1mg(標準タンパク質GFPの場合)です。数時間の反応後に、電気泳動(SDS-PAGE)等で合成量を確認することができるので、PCR産物を用いた、迅速な発現スクリーニングが実施できます。
また、生細胞を利用する系では合成することが難しい細胞毒性の強い試料や、立体構造形成に正しいジスルフィド結合が必要なタンパク質(受容体の細胞外ドメインやFv, Fab抗体)なども、必要な酵素等を添加することで活性のある可溶性タンパク質として合成できます。
さらに、最近、非天然型アミノ酸技術研究チームと連携して、設計した位置に修飾アミノ酸を導入する系を確立しました。タンパク質の本来の機能を損なうことなく標識を導入できるので、イメージングによる分子の挙動の観測や、架橋による分子間相互作用の探索など、ライフサイエンス研究の新たなツールを作る基盤となろうとしています。