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miRNAによる調節を再現する無細胞翻訳系
 
タンパク質は、数十から数千のアミノ酸が連なった鎖で、生命活動を担う主要な生体高分子です。アミノ酸配列の情報は、DNA上に塩基配列として記されています。このDNAの情報は、直接読み出されるわけではなく、いったんmRNAに転写されます。mRNAは、タンパク質合成装置である「リボソーム」と会合し、リボソームがmRNAの情報に従って順番にアミノ酸を連結していきます。この過程は、塩基配列からアミノ酸配列への変換であることから、「翻訳」と呼ばれています。近年になって、タンパク質合成の調節に短いRNA、「マイクロRNA:miRNA」が関与することがわかりました。miRNAは、~22ヌクレオチドの一本鎖非翻訳RNAで、配列特異的にmRNAに作用してタンパク質合成を抑制します。ヒトでは、多くのタンパク質の合成がmiRNAによる調節を受けると予想されています。
転写後制御研究ユニットでは、哺乳類の無細胞翻訳系を用いてmiRNAによる調節機構を再現する実験系を確立しています。無細胞翻訳系は、細胞抽出液を用いて調製する試験管内実験系で、系に加えたmRNAを翻訳してタンパク質を合成します。この系に、ヘアピン型のmiRNA前駆体あるいはsiRNA型の二本鎖RNAを加えると、成熟型のmiRNA一本鎖が生成して標的mRNAからのタンパク質合成を抑制します。miRNAは、Argonaute(アルゴノート)タンパク質に取り込まれてmiRISC複合体を形成し、miRISCが標的mRNAに結合して翻訳阻害、あるいはmRNAの分解を導きます。 転写後制御研究ユニットで確立した実験系は、より詳細な生化学的解析を可能とし、miRNAによる調節機構の解明に有効なツールとなります。