お知らせ
国際研究コンソーシアムFANTOMの総説がMammalian Genome誌に掲載されました
理研が中心となって2000年に結成された国際研究コンソーシアムFANTOMの15年の歴史と業績をまとめた総説が、Mammalian Genome誌のInformatics and Integrative Genomics特集号に掲載されました。
総説は、機能性ゲノム解析部門のPiero Carninci部門長、ゲノムデータ解析アルゴリズム開発ユニットのMichiel de Hoonユニットリーダー、細胞変換技術開発ユニットのJay W. Shinユニットリーダーが執筆しました。FANTOMプロジェクトでは、マウスやヒトの全転写産物を詳細に解析し、大量の配列データを研究者が利用しやすいように整備・公開しています。FANTOMの特に重要な成果として、タンパク質をコードせず(non-coding)、当時は意味のないがらくた(junk)と考えられていた配列が大量に転写されているなど、哺乳類ゲノムの全体像の理解につながる多くの思いがけない(serendipitous)発見があったことが挙げられます。一方、こうして見つかったロングノンコーディングRNA(lncRNA)*のほとんどはその働きや役割がよくわかっておらず(図)、新たな研究課題となっています。
今年始まったFANTOM第6期プロジェクトでは、CLSTが中心となって、lncRNAsの大規模な機能解析を行います。lncRNAの基礎研究を進めるための新たな基盤技術の開発を行い、ヒトの病気や健康にlncRNAsがどのように関わっているかの解明をめざします。
*ロングノンコーディングRNA(lncRNA)
long non-coding RNA。100~200塩基かそれ以上の塩基からなる、ncRNAの中でも長いものを指す。全長にわたる保存性は高くないが、反復配列やウィルス由来の配列などの保存性の高い断片が含まれる。一部のlncRNAについて、転写、翻訳、エピジェネティクスなどに関わることが示されている。
原論文情報:
Michiel de Hoon, Jay W. Shin, Piero Carninci
“Paradigm shifts in genomics through the FANTOM projects"
Mammalian Genome (2015), doi: 10.1007/s00335-015-9593-8, First online: 08 August 2015